著者の稲盛和夫氏は、京セラ、DDI(現KDDI)の創立者。
京セラの年間売り上げは約1兆円、KDDIの売り上げは約3兆円です。これだけの企業を作り上げた稲盛氏の経営理念は、とても難しく、とてもシンプル。それは、「人間として正しいことを追求していく」ということです。
近年、稲盛氏は、経営不振に陥った日本航空の経営再建に尽力されました。一時は再建不能とまでいわれた日本航空も順調に復活の道を歩んでいるようです。
本書は、その稲盛氏の経営理念の基盤になっている会計に対する考え方が書かれています。会計といってもテクニカルな数字の羅列ではなく、会計のあり方と経営者の心構えです。
以下はアマゾンでの書籍紹介。
バブル経済に踊らされ、不良資産の山を築いた経営者は何をしていたのか。儲けとは、値決めとは、お金とは、実は何なのか。身近なたとえ話からキャッシュベース、採算向上、透明な経営など七つの原則を説き明かす。ゼロから経営の原理と会計を学んだ著者の会心作。
これから起業をしたいと思っている方に是非とも読んでいただきたい1冊です。
本書のポイント
経営の基本理念
京セラ、DDIの堅調の要因は、「人間として正しいことを追求していく」という私自身の経営哲学をベースに「会計の原則」を確立したこと
- 人間として正しいことに基づいて経営する
- ものごとの判断にあたっては、常にその本質にさかのぼる
- 会計は経営者が知りたいことに答えるための仕組みである
- 経営者自ら襟を正し、社内の不正を許さない雰囲気を形成する
儲けるにはどうすれば良いか
健全な企業をつくるには
- ガラス張りの経営環境をつくる
「企業会計原則」の中に、「真実性の原則」というものが謳われているが、真実をありのままにあらわすことが会計のあるべき姿である。
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- トップだけが自社の状況がわかるだけでなく、社員も自社の状況やトップが何をしているのかを把握する
- トップ自らが自らをきびしく律し、誰から見てもフェアな行動をとる
- トップの考え、目指す姿を正確に社員に伝える
- 1対1の対応
経営活動のおいては、必ずモノとお金が動く。そのときには、モノまたはお金と伝票が、必ず1対1の対応を保たなければならない。
- ダブルチェック
人の心は大変大きな力も持っているが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうというような弱い面も持っている。人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。
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- 理論に一貫性のある管理システムを作る(意味のあるダブルチェックが必ず行われること)
感想など
本書で稲盛氏が言われていることは、本当にシンプルです。しかし、実行は本当に難しい。経営者自らが自らを律し、社員の模範となる存在にならなければなりません。
最近の報道で見られる企業トップの言動は、働く社員のモチベーションを下げるだけでなく、私たち国民の信頼も失わせるものでした。
稲盛氏は、本書で次のように述べています。
会社正義が尊重され透明性の高い会社が築かれてこそ、市場経済は社会の発展に貢献できる。
私は20年間、「社会の発展」を感じたことはありません。私たちの国の正義と透明性はどこのあるのでしょうか。