それまで低迷していたマクドナルドを7期連続のプラスに導いた日本マクドナルドCEO原田泳幸氏のマクドナルド経営論です。
原田氏は、2004年にアップルコンピュータから日本マクドナルドに転社。当時「マック(アップル)からマック(日本マクドナルド)」への転身と大変に話題なりました。
本書は、2011年に行われたAERAのセミナーの内容を書籍化したもので、読んでいくと原田氏が実際に目の前で話しているような錯覚を覚えてしまいます。原田氏の熱い想いがライブ感覚で伝わってくる1冊です。
以下、アマゾンの紹介文。
基本に忠実に。ただし、革新的なやり方で!AERAビジネスセミナーの講演を完全収録!7年連続マイナスから一転、7年連続プラスへ。日本マクドナルドのV字成長の鍵となった「経営改革」について熱く語る。
書籍のポイント
日本マクドナルドの歴史
創成期 1971年〜 | ・銀座第1号店 |
成長期 1977年〜 | ・店舗数7倍(126店舗→862店舗) ・売上高9倍 |
低迷期 1992年〜 | ・既存店売上高マイナス成長 ・客数減少 ・投資中断 ・シェア-3% ・事業多様化失敗 |
利益低迷期 1997年〜 | ・急速な店舗展開(創業20年で約1000店舗、次の10年で+3000店舗。出店スピード6倍) ・既存店売り上げ減少 ・経常利益低下 ・投資中断(新規店舗を除く) |
回復期 2004年〜 | ・全店売上高+27% ・全店客数+33.5%(+4億人) ・人事改革 ・投資再開 ・グローバル化 |
現在 構造改革成長期 | ・FC戦略 ・グローバル化 ・メニュー戦略 ・新規ビジネスモデル ・地域戦略 ・マーケティングイノベーション |
低迷の原因
入社当時は、幹部から各店舗間のカニバリぜーション(共食い)が進んだためと説明されていた。しかし、本当の原因は各店舗でSQC&Vが出来ていなかったためであった。
SQC&Vとは
- Quality ー クオリティ、最高のおいしさ、安全性
- Service ー サービス、心温まるおもてなし、クイックサービス
- Cleanliness ー クレンリネス、快適な食事空間、清潔さ
- Value ー バリュー、総合的な価値ある食事体験
低迷期は店舗の拡大に腐心するあまり、店舗として基本的なことができていなかった。
人材がいて初めてお店を開けることができる。お店を開いてから人を育てていては良いサービスの提供は不可能である。
らしさを取り戻す
マクドナルドの売り上げの中心はビッグマックである。ビッグマックの売り上げを増やすことがらしさを取り戻すこと。
クウォーターパウンダーが売れると、ビッグマックがもっと売れる。コーヒーが売れるとビッグマックがもっと売れる。基幹ビジネス、コアメニューをもっと売っていくために、新しいメニューを出していく。
回復のための施策
日本マクドナルドは、2011年ブランド・ジャパンで4位に選ばれた。(ブランド・ジャパンとは、消費者とビジネスパーソン、延べ50,000人以上の方々に評価していただく、日本最大規模の客観的ブランド価値評価プロジェクト。日経BP社の主催)
本書ではブランド・ジャパンの評価パスにしたがって語られている。ブランド・ジャパンの評価パスは以下の4点を軸に評価される。
フレンドリー | ・好きである、気に入っている ・親しみを感じる ・なくなると淋しい ・共感する、フィーリングが合う |
コンビニエント | ・知らない、まったく興味がない ・最近使っている ・役に立つ、使える ・品質が優れている |
アウトスタンディング | ・ステータスが高い ・カッコいい、スタイリッシュ ・他にはない魅力がある ・際だった個性がある |
イノベーティブ | ・今注目されている(旬である) ・時代を切り拓いている ・勢いがある |
- フレンドリー
- QSCの追求 ー 作り置きを廃止。独自のキッチンシステムし、オーダー後に作り始める。現在はオーダー後1分以内で提供が可能
- バリュー戦略
- ミステリーショッパー(覆面調査員)の導入
- マクドナルドはピープルビジネス
- コンビニエント
- 朝マック、ダイニングテーブル、ドライブスルー、24時間営業の実施
- 無線LAN(BBモバイルポイント)の導入
- マックでDS(コンテンツのフリーダウンロード)の開始
- 携帯クーポンサイトの展開
- アウトスタンディング
- お客様の本音を理解する ー お客様へのアンケート調査では「低カロリー・オーガニック、ヘルシー」がリクエストの上位となる。しかし、店舗で実際に売れるのはクォーターパウンダーなどの真逆商品。お客様は理想と本音の違いを理解する
- 期待以上のサービス ー お客様の要望以上のことをやる。しかも、マクドナルドらしさを忘れない
- お客様をだまさない ー お客様を操縦することをしてはいけない。しかし、お客様の誘導はしっかりとする
- イメージの統一 ー 店舗デザインは企業の顔であるので統一感を持たせる。店舗の種類によってはデザインを変える
- コーヒーは新規顧客獲得に不可欠 ー コーヒーが売れるとビッグマックが売れる。ビッグマックは「金のなる木」である。コーヒーは他店と競争の対抗商品でなくビッグマックを売るための戦略
- 飲食店の売り上げは客単価×客数(顧客獲得率×来店頻度)
- イノベーティブ
- 地域別価格の導入
- 店舗の戦略的閉鎖 ー 2004年、3900店あった店舗を、徐々に減らして現在は3300店。店舗が減ることで、各店舗の売り上げが向上
- 8年で6回の値上げ
- 価値と価格の理念
- 顧客の期待値を超える価値の創造
- 独自の価値の創造が堅固な対価を生む
- 独自性がなければ不毛な価格競争
- 価格はコストにマージンを載せたものではない。競合を考えた価格設定でもない。需要を最大化するための価格設定(デマンドベースプライシング)
で、感想など
ビンボーな私は低迷期のマックをかなり利用していました。
確かにマックのコーヒーはおいしくなった。でも、最近感じるのは「割安感がなくなったなぁ」ってこと、、、最近は牛丼を積極的にチョイスするようになりました。本当はマックに行きたいのですが、ワンコインではお腹いっぱいになりません。
あと、最近は接客のレベルが落ちているので、行ってイライラするのはイヤだなぁって思ってます。先日も、お客が10人以上並んでいるのに、開いているレジは1つだけで、2つ目を開けなかったという場面に遭遇しました。結局5分以上待たされる羽目に、、、奥には、スタッフがいっぱいいるのにどうしてもうひとつレジを開けられなかったのだろう?って、、、
確かに本書で書かれいることは、とてもすばらしいのですが、自分の感じていることと異なっているので、少しながら違和感を感じています。
しかし、マクドナルドがV字回復したことは事実なワケで、原田氏が行った基本への回帰である「SQC&V」は大事なのだなぁと、、、
- 作者:原田泳幸
- 発売日: 2011/12/07
- メディア: 単行本