ちっちゃいけど、世界一誇りにしたい会社/坂本光司

「日本で一番大切にしたい会社」シリーズの法政大学教授 坂本光司先生の書籍です。本書は、日本各地で地域と共生する小さな店舗や会社を紹介します。

坂本先生がライフワークにしている「日本で一番大切にしたい会社」で取り上げられる企業と、本書で取り上げられる企業との差は明確にはされていません。個人的には「日本で一番大切にしたい会社」は、中堅企業としての地位を確立して比較的収益が安定している企業で、本書で紹介される企業はその予備軍という印象です。

どのような企業が紹介さているのかというと。

  • 小ざさ − ようかんともなかだけの売り場面積ひと坪の和菓子屋さん
  • ハッピーおがわ − 老人や寝たきりの人のための寝具や衣料を販売
  • 丸吉日新堂印刷 − 再生紙を使ったエコ名刺
  • 板室温泉大黒屋 − 館内や敷地に現代アートを取り入れたリピート率の高い旅館
  • あらき − 熊本市のワインを中心に販売する酒屋さん
  • 高齢社 − 高齢者専門の人材派遣業
  • 辻谷工業 − オリンピックで金メダルを連発した砲丸を製造
  • キシ・エンジニアリング − 障害者用の車いすと呼吸トレーナーを製造販売

どの企業も心が温まるストーリーと、地域・社員・顧客に対する特別な思い入れが心を熱くします。

高度成長期の大量生産・売上至上型の企業経営は終焉を迎えつつあります。今後、成功する企業は、大きな資本力でグローバル市場で血みどろの戦いを繰り広げるグローバル型企業と、地域と共生・発展していくローカル型企業に二極化していくでしょう。

富を求めるならグローバル型、人間としての幸せを求めるならローカル型です。社会には(私を含めて)多く弱者がいます。社会的な競争を好まない人々も多くいます。ローカル型の企業は、このような人々と共に「働く幸せ」を創造し提供する役務を担うのです。

「日本で一番大切にしたい会社」で紹介されている日本理化学工業には、「働く幸せの像」とう碑が立っています。刻まれている言葉は次のようなものです。

導師は人間の究極に幸せは、
人に愛されること、
人にほめられること、
人の役に立つこと、
人から必要とされること、
の4つと言われました。
働くことによって愛以外の3つの幸せは得られるものだ。
私はその愛までも得られると思う。
(大山泰弘)

どうすれば、働き手に役に立ってもらえるかを真剣に考えることが、これからの企業経営者の課題なのです。

目次

  • 第1章 小ざさ ー なぜ、40年以上、早朝から行列がとぎれないのか?
  • 第2章 ハッピーおがわ ー じずから末期がんになっても、本当に困っている人に「なくてはならないもの」を届けたい
  • 第3章 丸吉日新堂印刷 ー 障害のある人が目を輝かせて納品にくる「点字付きペットボトル再生名刺」で、一枚に付き一円を日本盲導犬協会に寄付する仕組みを開発
  • 第4章 板室温泉大黒屋 ー リピーター率73%!450年以上続く旅館に現代アートを取り入れ、”人生の最後に「もう一度行きたい」と思われる宿”に 
  • 第5章 あらき ー 店をうる覚悟をした数年前から、世界が認めた「ワインが語りかけてくる」酒屋へ!
  • 第6章 高齢社 ー 持病のパーキンソン病に負けずに、「高齢者に働く場と生きがい」を届けたい
  • 第7章 辻谷工業 ー 商店街の小さな町で生まれる「世界一の魔法の砲丸」と職人魂
  • 第8章 キシ・エンジニアリング ー 「脳障害の愛娘を救いたい」の一心で、世界から評価される福祉機器を作る