マッキンゼーが採用時に重要視するリーダーシップとは

「採用基準」は採用担当者であった著者が採用時に見るべき採用基準について記載した書籍です。
大手コンサルティング会社のマッキンゼーで採用担当の職務にあたっていた著者は、あとがきで本書を書いた理由を次のように述べています。

私が本書で伝えたいと考えたことは、世間の評価に流されず、自分自身の生き方を追求するために不可欠なものが、リーダーシップだということです。(242ページ)

コンサルティング会社は、顧客の持つ問題点を分析し、正しい方向へと導くための戦略づくりが主な業務です。それまでクライアントが修正できなかった問題点を改善に導くためには、相当のエネルギーが必要になるのです。

このエネルギーの中核になるのがリーダーシップです。

本書では、マッキンゼーが必要とする人材像と、リーダーシップとは何かを説いています。

マッキンゼーはリーダーシップのポテンシャルを見ている

マッキンゼーは、経営コンサルタントの大前研一氏、DeNA創業者の南場智子氏、投資家の瀧本哲史氏など、数多くの著名人を排出しています。
もともと優秀な人材を採用しているのだから、当然といえば当然なのですが、人材育成に力を入れているため、入社後にそのポテンシャルが大きく引き出されるそうです。

マッキンゼーが全世界的に決めている採用の基準は、(1)リーダーシップがあること、(2)地頭がいいこと、(3)英語ができることです。
日本の学生は(2)こそもっているが、(1)、(3)は大きな欠落が見られます。日本支社での採用では、日本の大学を卒業予定の留学生に日本支社の採用枠を取られてしまうことも珍しくはありません。

マッキンゼーにおいては、将来のマッキンゼーを担うリーダーを求めて採用を行なっています。従って、学生を評価する際には「リーダーシップ・ポテンシャルをもっている」ひとを採用するのです。
では、リーダーシップのポテンシャルとは何でしょうか?以下に本書でかかれたリーダーとしての3つの基本を記載します。

①リーダーのタスク

リーダーが業務でなすべき仕事は、次の4つです。

  1. (成果を最優先にした)目標を掲げる
  2. (自己犠牲をはらって)先頭を走る
  3. (情報を取捨選択して自分が)決める
  4. (チームやクライアントに情報を)伝える

②リーダーの基本作業

リーダーは自らの仕事を行う際、次の4つを行わなければなりません。

  1. バリューを出す ー 常に成果を意識して行動
  2. ポジションを取る ー 自分の意見や立場をはっきりと表明
  3. 自分の仕事のリーダーは自分 ー イニシアチブを取って仕事がうまく進むようにお膳立て
  4. ホワイトボードの前に立つ ー 積極的にホワイトボートの前に立ち意見集約を図る

③リーダーシップとは

リーダーとは、「使命を達成するために、必要なことをやっている人」、「自らリーダーシップを発揮して、情報を取捨選択して意思決定をする人」です。
この行動のバックボーンには、「成果を最優先に考える」という強い意志がなければなりません。そのためにチームメンバーにも、成果を出すことがどれだけ重要であるかを十分に理解してもらうことが不可欠です。

また、リーダーが持つべき素養として「処方箋を書くための構築力」が必要となります。この処方箋は、問題を解決するためのものです。
リーダーの構築力とは、「独自性があり実現した時のインパクトが極めて大きな仮説をたてる能力」、「ゼロから新しい提案の全体像を描く構想力や設計力」が必要であると筆者は説いています。

まとめ

護送船団方式の国家運営はいよいよ終焉に近づいています。高度成長期の学生は大手企業に就職さえすれば、人生における殆どの作業を終了したといっても過言ではありませんでした。
しかし、現在の企業は就職してからが本当の勝負です。様々な場面で自分自身の価値を明らかにしていかなければ、会社内で居場所を失ってしまいます。

リーダーシップを見につけ、発揮していくことが、現代社会人の必須スキルになっていくことは明らかです。
本書は、学生のためのマッキンゼー就職対策ではなく、現代社会人のためのサバイバル処世術なのです。