マネジメント[エッセンシャル版] -基本と原則/P・F・ドラッカー【その2】

現代社会において企業やマネジャーが、どのような役割を持ち、どのような責任で、どのような行動をするべきかが記された書籍である。
本書は、重要な概念が多いため、本書内のパートごとにまとめを作成した。

【Part1】マネジメントの使命 | 【Part2】マネジメントの方法 | 【Part3】マネジメントの戦略

目次 − 【Part2】マネジメントの方法

マネジメントの方法

マネジメントの必要性

複数の人間が、意思を疎通させつつ課題を遂行する必要があるとき、組織はマネジメントを必要とする。
マネジメントを欠くと組織は管理不能となり、計画は実行されなくなる。

マネジャーとは

マネジャーとは
    • 組織の成果に責任を持つもの
    • 命令する権限ではなく、貢献する責任を負うもの
マネジャーの役割
    1. 投入した資源の総和より、大きなものを生み出す生産体をつくる
    2. 決定と行動において、すぐに必要になるものと将来必要になるものを調和させる
マネジャーの仕事
    • 目標を設定する
    • 組織する
    • 動機づけとコミュニケーションを図る
    • 評価測定する
    • 人材を開発する
マネジャーの資質
    • 根本的な資質は「真摯さ」である
    • 何が正しいかを考える
    • 誰が正しくないかを考えない
    • 真摯さよりも知的な能力を評価しない
マネジャー職の職務設計

マネジャーの働きを妨げるような職務設計を行ってはいけない。具体的には以下の点に留意する。

    • 学び、育つことができる環境をつくる
    • 目的、目標、機能がなければならない。自ら貢献できねばならない
    • マネジャーは単なる調整者ではなく、自らも仕事をするプレイングマネジャーである
    • マネジャーひとりと直接部下ひとりで遂行できるものにしなければならい
    • マネジャーは推奨ポストではいけない。肩書きは地位と責任を意味する
職務設計の視点

マネジャーの仕事、は以下の視点から設計するべきである。

    1. マネジャー本来の業務
    2. マネジャーへの責任付与
    3. 上、下、横の関係で定義 
    4. 情報とその流れによる
自己管理による目標設定

組織には、間違った方向へいく要因が4つある。

    1. 技能の分化 − 技能そのものを目的としてはならない
    2. 組織の階級化 − 全員の目を仕事が要求するものに向けさせる
    3. 階層の分離 − 共通の言語と共通の理解
    4. 報酬の意味づけ − 完璧な報酬システムはない

これらの要因を加味し、働き手の貢献を共通の目標に向ける必要がある。

    • 目標管理 − すべてのマネジャーは、明確な目標を持ち、自らの部門が上げるべき成果を明らかにする
    • 自己管理 − 自らの目標を知っているだけでは十分ではない。目標に照らして、自らの仕事ぶりと成果を評価する
組織の精神

組織は凡人から強みを引き出し、他のものの助けとなるかが、組織の良否を決定する。
組織の焦点は次の点にあわせねばならない。

    • 成果にあわせなければならない
    • 配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行わなければならない
    • 人事に関わる決定は、真摯さこそが唯一絶対の条件
    • 問題でなく機会に目を向ける
    • 組織の精神を高くするには、配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であると認識する
真摯さが絶対条件

組織のなかで、最も重要視されなければならないのは、真摯さである。
具体的には、以下の兆候を持つものはマネジャーに不的確である。

    • 強みより、弱みを見るものをマネジャーにしてはいけない
    • 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つものをマネジャーにしてはならない
    • 真摯さよりも、頭の良さを重視するものをマネジャーにしてはいけない
    • 部下に脅威を感じるものを昇進させてはいけない
    • 自らの仕事に高い基準を設定しないものをマネジャーにしてはいけない

マネジメントの技能

意思決定

日本では合意(コンセンサス)を得ることでの意思決定を行っている。

    • 答えでなく問題を明らかにすることに重点
    • 反対意見を出やすくする
    • 当然の解決案よりも複数の解決案を問題にする
    • いかなる地位の誰が決定するべきかを問題にする
    • 決定後の関係者の売り込みを不要にする

マネジメントで行う意思決定は、全員一致によってなされるものではない。
意見の相違を促し、意見の対立を見ない場合は、決定しないくらいの気持ちで、意見の相違を重視する。
また、具体的な問題において行動するか否かを決定する指針は、

    • 行動によって得られるものがコストやリスクより大きい場合は行動する
    • 行動するかしないかにする。二股かけたり妥協したりしない

そして、意思決定の実行時には自らに次の問いを投げかける。

    • この決定を知らせなければならないのは誰か
    • とるべき行動は何か
    • それはなぜか
    • 行動をとるべきものが行動をとるには、その行動はいかなるものではならないか

実行のフィードバックの仕組みもあわせて考える。

    • 意思決定の前提になった予測を書面にして明らかにする
    • 決定の結果を体系的にフィードバックする
    • フィードバックの仕組みを決定する前に作り上げておく
コミュニケーションの原則

コミュニケーションについては、非常に難しい課題であり、現段階では充分な結果を得ていない。
わかっていることは、コミュニケーションには4つの原理があるということである。

    • コミュニケーションは知覚 - メッセージは受け手の知覚能力の範囲内か?受け手は受け止めることができるか?
    • コミュニケーションは期待 - 受け手が期待しているものを知ることなくコミュニケーションはできない
    • コミュニケーションは要求 - 受け手が何かになること、何かにすること、何かを信じることを要求する
    • コミュニケーションは情報ではない - 情報は符号、コミュニケーションは感情、価値、期待、知覚である
コミュニケーションの前提

企業は自らの部門において、いかなる貢献を行うべきかを明らかにする。この目標管理こそが、コミュニケーションの前提となる。
その管理手法は

    • 効率的である
    • 意味のあるべきもの
    • 測定の対象に適している
    • 制度が管理の対象に適している
    • 時間間隔が管理の対象に適している
    • 単純である
    • 行動に焦点を合わせる
経営科学

経営科学は、大きな貢献を果たす道具である。利用する際には、公準とすべきものを決定しておかなければならない。

    • 最小最弱でも社会や経済に直接影響を与える
    • 企業は人が価値があると思うものを提供する
    • 金を使う
    • リスクを冒すことこそが基本的な機能
    • 社会における変化の主体

マネジャーは経営学を実践する際に、その能力と現実とのギャップについて責任を負う。
マネジャーの責任をもって経営科学を生産的に利用するには、

    • 仮説を検証する
    • 正しい問題を明らかにする
    • 答えではなく代替え案を示す
    • 問題に対する公式でなく、理解に焦点を合わせる

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