マネジメント[エッセンシャル版] -基本と原則/P・F・ドラッカー【その1】

現代社会において企業やマネジャーが、どのような役割を持ち、どのような責任で、どのような行動をするべきかが記された書籍である。
本書は、重要な概念が多いため、本書内のパートごとにまとめを作成した。

【Part1】マネジメントの使命 | 【Part2】マネジメントの方法 | 【Part3】マネジメントの戦略

マネジメントとは何か

組織は目的ではなく手段である。「その組織は何か」なのではなく「その組織は何をなすべきか、機能は何か」である。
組織の中核をなす機能がマネジメントであり、マネジメントには3つの機能がある。
(括弧内の2つは補足的な役割)

    1. 自らの組織に特有の使命を果たす − その組織がもつ特有の使命、目的を果たす
    2. 仕事を通じて働く人を生かす − 働き手にとっての自己実現の場をつくる
    3. 社会への貢献 − 自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する
    4. (時間を管理する − 常に現在と未来、短期と長期を見ていく)
    5. (起業家としての役割 − 小さな分野から大きな分野へ資源を向ける)

企業とは何か

利益主導の企業経営は間違いである

企業は、営利組織であってはならない。利潤動機による企業活動は間違いである。利益は、企業の目的ではなく条件である。

企業の目的は顧客の創造にある

企業は社会の機関であり、社会への貢献が必須である。活動の中で、顧客を創造することが企業の目的となる。
顧客が価値を認め購入するものは、財やサービスではなく、それらが提供する「効用」であることを理解しなければならない。
顧客に「効用」を提供するため、企業はマーケテイングとイノベーションの機能を有する必要がある。

    • マーケテイング − 製品とサービスを顧客にあわせ、自然に売れるようにする
    • イノベーション − 新しい満足を顧客に提供する
資源を生産的に利用する

顧客の創造という目的を達成するには、富を生むべき資源を有効に活用し、生産的に利用しなければならない。資源を活用し、生産性を向上させることが、企業の管理的機能である。
生産性に影響を与える要因には以下のものがある。

    • 知識 − 知識は正しく利用したとき最も生産的な資源となる
    • 時間 − 最も消えやすい資源なので有効的に活用する
    • 製品の組み合わせ − プロダクトミックス
    • プロセスの組み合わせ − 部品をつくるのと買うのはどちらが生産的かなど
    • 自らの強み − どの事業に注力するのが最も生産的か
    • 組織構造の適切さ、および活動間のバランス − 管理部門に多くのコストがかかってないか、研究開発に多くの人材を取られていないかなど
利益の持つ機能

利益は原因ではなく結果である。企業活動の結果手にするもので、経済的機能を果たす必要不可欠なもの。利潤動機の経営は問題があるが、利益のない経営も問題である。

    1. 利益は、成果の判定基準
    2. 利益は、不確実性というリスクに対する保険
    3. 利益は、より良い労働環境を生むための原資
    4. 利益は、医療、国防、教育、オペラなど社会的サービスと満足をもたらす原資

事業とは何か

自社の定義

「われわれの事業は何か。何であるべきか」の問いに企業自ら、徹底的に検討し、矛盾のない答えを定義をする。
すべての意思決定は、この問いの答えを持って行わなければならない。

自社の事業とは

「われわれの事業はなにか」の問いに答えることがトップマネジメントの責任である。その答えとなる目的と使命のスタート地点は常に顧客でなければならない。
「顧客は誰か」、「どこにいるのか」、「何を買うのか」をいつも自らに問いかけている必要がある。

自社の事業は何になるか

常に環境は変化している。「われわれの事業は何か」の定義の有効期限は、長くても10年程度とし、定期的に見直しを実施する。
見直しを行う際は、さまざまな変化や状態に留意する。

    1. 人口構造の変化
    2. 経済構造、流行と意識、競争状態の変化によってもたらされる市場構造の変化
    3. 今日の財やサービスで満たされていない欲求は何か

事業の目標

マーケテイングの目標

マーケテイングの目標は、集中の目標(集中と選択の集中)と市場地位の目標がある。市場地位の目標は、最大ではなく最適を目指さなければならない。

    • 既存の製品についての目標
    • 既存の製品の廃棄についての目標
    • 既存の市場の新製品についての目標
    • 新市場についての目標
    • 流通チャネルについての目標
    • アフターサービスについての目標
    • 信用供与についての目標
イノベーシヨンの目標

イノベーシ∃ンの目標は、「われわれが何であるか」の問いの答えを具体的に出すものである。

戦略計画

未来は、ただ望むだけでは起こらない。

    • いま意思決定する
    • いま行動する
    • いまリスクを冒す

ことが必要になる。必要なのは長期計画ではなく、戦略計画である。

戦略計画への誤解
    • 戦略計画は魔法の箱や手法の東ではない
    • 戦略計画は予測ではない
    • 戦略計画は未来の意思決定に関わるものではない
    • 戦略計画はリスクをなくすものではなく、最小にするものでもない
戦略計画とは何か
    1. リスクを伴う企業的な意思決定をおこない
    2. その実行に必要な活動を体系的に組織し
    3. それらの活動の成果を期待したものと比較測定する

マネジメントの判断力、指導力、ビジョンは戦略計画という仕事を組織化し、そこに知識を適応して強化される。

仕事と人間

新しい現実

労働環境は大きく変革し、現代の労働は次のような特徴を持っている。

    1. 被用者社会の到来 − ほぼすべての労働者は組織に属している
    2. 肉体労働者の心理的、社会的地位の変化 − 現代は肉体労働者は少数派になり、知的労働者が多数派
    3. 脱工業化社会における経済的、社会的センターとしての知識労働知識労働者の対等
仕事とは何か

仕事の生産性を上げることと、人が生き生きと働く上で必要とされるものは異なる。したがって、仕事の倫理と労働の力学に従い、マネジメントしなければならない。
仕事の生産性を上げるために、必要となるのは、

    1. 分析 − 基本的な作業を明らかにし、論理的な順序に並べること
    2. プロセスの統合 − ひとりひとりのプロセスを生産プロセスに組み込む
    3. 管理のために手段を組み込む − 必要な水準にプロセスを維持するためにフィードバックする仕組み
労働における5つの次元

仕事をマネジメントするためには、仕事が持つ5つの次元を知る必要がある。
これらは困難な課題であるが、何らかの解決策や調整策を見いださなければならない。

    1. 生理的な次元‐人は精神的、肉体的な疲労がある
    2. 心理的な次元―働き手の労働意欲
    3. 社会的な次元―コミュニティとの結びつき
    4. 経済的な事件‐生計の資としての労働
    5. 政治的な次元‐組織内の権力関係

これまでは、これらの次元のひとつだけを唯一のものにしていた。マルクスは経済的な次元がすべてを支配すると主張した。しかし現代では、5つすべてに留意しなければならない。

仕事の生産性

「われわれが何であるか」の問いに答えるには、仕事を生産的におこなうことが必要になる。

    • 生産性向上の条件を整理する(分析、統合、管理、道具)
    • 成果を中心に考える − 技能や知識などインプツトから仕事をスタートしない
    • 仕事の上の人間関係は、尊敬に基礎に考える
日本企業の成功要因
    • 職務の設計をおこなわずに、やり方は職場に任せる
    • 退職するまで研鑽を日常の課題とする
    • 終身雇用制
    • 福利厚生が重視される
    • 強力なリーダーを育てない
人は最大の資産

権限と権力は異なる。マネジメントは権力を持たない。責任を持つだけである。それ以上のものは、持たない。
マネジメントにおいて、資源のうち人が最も活用されていない資源である。
この資源を活用するために、人こそ最大の資産であることを理解して、次のことを実行に移す。

    • 仕事と職場に成果と責任を組み込む
    • 共の働く人たちを生かすべきものととらえる
    • 強みが成果に結びつくよう人を配置

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