1分間マネージャー/K・ブランチャード他

■はじめに

「1分間マネージャー」は、真のマネジメントを探す若者が、マネジメントの達人である1分間マネージャーに、マネジメントの極意を教わる物語である。

■気分の良い部下は、良い結果を生む

1分間マネージャーは、部下から大きな成果を引き出すのに、ごくわずかな時間しかかけない優れたマネージャーのことである。
成果重視のマネジメントではなく、人間重視のマネジメントを実践する。

部下の力を借りることなしに、いったいどうして業績を上げられるかね?わたしは部下と業績の両方に心を配る。この二つはともに手を取り合ういわば車の両輪なんだよ。

1分間マネージャーが主人公の若者に伝える座右の銘

気分の良い部下は、良い結果を生む

部下がより良い環境で仕事ができるよう配慮するのが、マネージャーの責務なのである。
1分間マネージャーは3つ方法を用いて部下の管理を行う。それぞれの行為は、すべて1分以内で修了する。

■1分間目標設定

1分間マネージャーの土台の考え方。
部下が何をしなければならないのかという職責と、何について責任があるかを明らかにする行為のこと。

  • 部下になすべきことを説明し、同意を得る
  • 各目標とその達成基準をひとつずつ、1ページ以内に紙に書く(ひとつの目標と達成基準はあわせて250語以内)
  • すべての目標と達成基準は1分以内で読み終わる量でなければならない
  • 書いた紙をマネージャーと部下で一枚ずつ保管する

このようにすることで、すべてが明確になり、お互いがその進捗状況を定期的にチェックできるようになる。
「寝耳に水は一切なしの理念」−何をしなければならないかを誰もが始めから知っているという考え方である。

80-20ルールで目標設定する

1分間マネージャーは、重要な成果の80%は自分の目標の20%からあがるという80-20ルールという考え方を重視している。
したがって、書き出される目標はせいぜい3つから6つくらいにしかならない。

問題の把握

問題の把握は、常に行動に即したかたちで認識できていなければならない。
どういう態度とか感じではなく、起きている事柄を観察しうる、または測定しうることばで、部下は問題を把握していなければならない。

どういうふうになれば良いかを述べられないということは、まだ問題を把握していないということなんだ。それはぶつくさ言っているのと同じだ。”現実に”起きていることと、こうなって”欲しいと思う”こととの間にズレがあるときだけ、問題があるのだ。

■1分間称賛法

1分間目標設定を行ったあと、マネージャーは部下を身近で見守る必要がある。
方法は二通り、ひとつはマネージャーは部下のやる活動を綿密に観察する。ふたつめは部下に仕事の進捗状況を細かく記録させ、提出をさせる。
これは、部下が「仕事をうまくやっている」ところを発見するためである。

  • 前もって、仕事ぶりを指摘する意図があることを伝える
  • うまくできた行為を発見したら、その場ですぐ褒める
  • 正しく、うまくやった事柄を具体的に話す
  • うまくやったのを見て、上司としてどんなに良い気分か、それがどのように役に立つのかを伝える
  • 沈黙の時間をおき、以下に気分が良いかを当人にも感じさせる
  • 引き続きがんばるように励ます
  • 握手をしたり、触れたりして部下が成功することを心から願っていることをわからせる
思い切ってできる環境を与える

部下が何かを性格にやり遂げるまで待ってから褒めるマネージャーが多い。その結果、多くの部下は褒められることなく、悪い点ばかりを指摘されてしまう。
1分間目標設定では、うまくできることを優先的に盛り込む。うまくできて、称賛を多く言える環境をマネージャー自身が用意する。

■1分間叱責法

部下が何か間違いを犯したとき、何が間違いなのか、上司としてどう感じているのか、怒っているのか、困っているのか、ガッカリしているのかを伝える。

  • 部下の行為について、はっきりと、あいまいでない言葉で指摘するつもりがあることを前もって知らせる

−−−叱責の前半−−−

  • 間違った点はただちに叱る
  • 何が間違っているのかを具体的に教える
  • 間違いを見てどう感じているのかを話す。確実であいまいでない言葉で
  • 不愉快でも、沈黙の時間を数秒おき、あなたの感じを相手に”味あわせる”

−−−叱責の後半−−−

  • 本心から部下の味方であることを伝えるため、握手をしたり、肩にて置いたりする
  • 部下を高く評価していることを思い出させる
  • 部下に好意を持っていることをはっきりと言う
  • 叱責が終わったら、これでおしまいということを認識する

叱責する際は、価値や値打ちを攻撃してはいけない。人間として良いかどうかは、努力でなんとかなるというものではない。叱責するのは彼らの「行動」だけである。

■マネージャーができる3つの選択

  1. 勝者を雇い入れる。金がかかるし、人を見つけるのが困難。
  2. 勝者になる可能性のあるものを雇う。そのものを訓練して勝者に育て上げる。
  3. 祈る

「どうかこの人間が、うまくやりますように」と毎日祈っているマネージャーは意外に多い。

■目標の定め方

目標を決定るする際は、低い目標から始め、目標が達成されるごと、少しずつ目標の難易度を上げていく。
これは、動物に芸を教えるように我慢強く、少しずつ進めていかなければならない。しかし、結局この行為が「勝者を雇う」ということになる。

■部下に触れるときの注意点

称賛、叱責を行っている際に、部下に触れるときは、安心・援助・激励などの言葉を口にしているときのみとする。相手から何かを奪っているときに(注意、叱責)触れてはならない。