自分の会社を変えたいと思うのなら、まずはあなた自身が変わらなければならない。あなたが変化を望まないかぎりは、会社も十分な収益を上げることはできないのである。 ー まえがきより
著者のマイケル・E.ガーバーは、スモールビジネスのコンサルタントとして多くのスタートアップ企業を見てきました。本書は著者の豊富な経験から、スモールビジネスが成功するためのノウハウが満載されています。
スタートアップビジネスが成功するポイントはどこのあるのか?
本書は、多くの起業家が誤りがちなポイントを寓話の形態でレクチャーします。具体的でわかりやすいので、これから起業しようという方には是非とも一読して欲しい書籍です。
本書のポイント
「職人的」人格の弊害
本書では、起業家の人格を「起業家」「マネージャー」「職人」の3つに分類しています。
- 起業家 ー 変化を好む理想主義者
- マネージャー ー 管理が得意な現実主義者
- 職人 ー 手に職を持った個人主義者
起業家がビジネスで成功するには、マネージャーの人格が必須なのです。しかし、多くの起業家は、自分自身が職人であり続けることに固執してしまいがちです。これは、起業家にとって職人の人格で居続けることが一番楽だからです。
本書の中で経験豊富なコンサルタントは、お店をオープンしたばかりのサラに次のアドバイスをします。
「たとえキミが、職人としてすばらしい資質をもっていたとしても、それだけでは成功することはできないんだ。雑用に追われるばかりで、ストレスがたまって、仕事そのものが面白くなくなってしまう。どれだけひどい気分になるかわかるだろう?キミが職人という立場で経営するかぎりは、何度やっても同じ結果になってしまうだろうよ」
ビジネスを大きくするためには、職人である自分自身を捨てて、マネージャーの人格を身につける必要があるのです。
自分がいなくてもうまく行く仕組みを作る
マクドナルドを世界的なビジネスにしたレイ・クロックは、マクドナルド兄弟のハンバーガー店を訪れたときに大きなインスピレーションを感じました。
レイ・クロックは「何を売るか」ではなく、「どのように売るか」に注目した。つまり、売るための仕組みにこそ価値があると考えたのである。マクドナルド兄弟の店でレイ・クロックが理解したことは、ハンバーガーが彼らの商品ではないということだった。
レイ・クロックは、ハンバーガーが商品ではなく、ハンバーガーを売る仕組みが商品であると考えました。そして「誰もが手軽においしいハンバーガーを食べることができるマクドナルド」という商品のフランチャイズ化を考えたのです。
スモールビジネスの40%が立ち上げから一年以内に廃業を余儀なくされているという事実を考えれば、事業が失敗しないことも大切な要素になる。このことに気づいたレイ・クロックは、誰が始めても失敗しないような事業モデルをつくることに精力を注いだ。
このようのマクドナルドは、「誰が始めても失敗しないような事業モデル」を構築し、世界各地の出店に成功したのです。
あなたのアイデアを仕組み化し、誰もが失敗しない事業モデルの構築することが、あなたを職人からマネージャーに変身させ、ビジネスを成功に導く唯一の方策なのです。
どこの誰でも、同じ結果が出せるような事業の施策モデルをつくるところから始めよう。事業とは、あなたとは別の独立した存在だ。それはあなたの努力の成果であり、特定の顧客のニーズを満たす機会であり、あなたの人生をより豊かにする手段である。
事業発展プログラムの構築
事業発展プログラムとは、あなたの事業を「誰が始めても失敗しないような事業モデル」にするための法則です。以下の7つのステップから構成されます。
事業発展プログラムの構築にあたっては、イノベーション→数値化→マニュアル化という流れでを考えて構築しなければなりません。
ここで大切なのはイノベーションの考え方です。イノベーションとは、新しいことを考えることではなく、新しいことを実践することなのです。
- ステップ(1)「事業の究極の目標」あなたが望む人生の目標とは?
- 事業の目標を考えるときに一番大切なことは、あなた自身の人生の目標を考えることです。事業の目標とは、あなたが「何に最も価値を感じ、どんな人生を望んでいるか?」に対する答えとなっていなければならなりません。
- ステップ(2)「戦略的目標」人生設計の一部として事業を考える
- 事業を詳細かつ具体的に定義します。どんな事業か?顧客は誰か?売り上げはいくらか?プロトタイプの完成時期は?事業エリアは?衛生管理は?雇用は?服装は?研修は?・・・
- ステップ(3)「組織戦略」仕事の役割分担を明確にする
- 指揮・命令系統や仕事の内容を明確にした組織図を作成します。組織図は末端の業務から考えるていくのではなく、トップの仕事から考えていきます。
- ステップ(4)「マネジメント戦略」システムが顧客を満足させる
- 顧客に対するサービス内容を具体的に定義します。サービス内容とは、単なる販売方法ではなく、顧客に接する挨拶や服装など詳細な内容も含まれています。誰がサービスを担当しても、顧客が均一なサービス体験ができることが重要です。
- ステップ(5)「人材戦略」事業とはゲームである
- スタッフが「働く」ことが自分のためになるんだと思える仕組みを作ります。「成果を上げる」ことにやりがいを感じるような仕組みである必要があります。
感想など
「誰が始めても失敗しないような事業モデル」という概念は、ビジネスを行う上でとても大切な考え方です。わたし自身は、現在でも職人的な人格が多くの部分を支配しています。この人格ゆえにビジネスで大きな失敗をしました。
なぜ失敗したのかが、本書を読んではっきりとわかりました。職人ある自分に誇りを感じ、マネージャーとしての立場を放棄していました。ビジネスの情報を共有せず、多くの情報が私の内部からでず、わたし自身が多くの仕事を抱える羽目になったのです。
自分で抱えた理由は「自分でやった方が早い」という理由からです。いつしか、わたしひとりが事務所で多くの残業をするようになり、心も身体も壊してしまったのです。
本書はわたし自身が真理と感じた多くの事柄が記載されています。ビジネスはひとりの人間では動かすことができない仕組みになっていなければなりません。
目次
- まえがき
- はじめに どうして多くの人が起業に失敗するのだろうか?
- PART I 失敗の原因を知る
- 1 起業家の神話
- 2 「起業家」「マネジャー」「職人」―3つの人格
- 3 幼年期―職人の時代
- 4 青年期―人手が足りない!
- 5 誰もが経験する成長の壁
- 6 成熟期―商品よりも重要な起業家の視点
- PART II 成功へのカギ
- 7 フランチャイズに学ぶ「事業のパッケージ化」という考え方
- 8 「事業」の試作モデルをつくる
- 9 自分がいなくてもうまくいく仕組み
- PART III 成功するための7つのステップ
- エピローグ 実践しないかぎり、何も理解できない
- あとがき はじめの一歩を踏み出そう
- 作者:マイケル・E. ガーバー
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 単行本