2014年、中国は崩壊する/宇田川敬介

2014年に中国は崩壊する。本書4章で書かれている中国崩壊のシナリオはこうだ。

  1. 計画経済による経済成長に滞る(中国リスクを嫌う外国投資家の投資が減少)
  2. 不動産価格が下落、株価の下落(バブル崩壊
  3. 人民元の為替が上昇(不動産価格の下落で通貨量を制限)
  4. 産業の技術競争力がないため、安価で製品供給を維持するため品質が低下
  5. GDPの低下 → 更に通貨の流通量を制限
  6. 生活ができな民衆が暴動 → 中国共産党崩壊

にわかには信じがたいシナリオであるが、本書を最初から読むと説得力のある意見に思えてくる。

まず、現在の中国を知るには、中華思想を知らなくてはならない。

中華思想とは中国の中心部を支配した政府が世界の中心で、その文化・思想が最も価値があるものだという思想である。それら中国最高の思想や文化に帰属しない異民族の独自文化には価値がなく「化外の民」として教化・成敗することが必要だと言うのだ。

中国が、他国の意見に耳をかそうとしない態度をとるのは、この中華思想が思想の中心あるということだ。中華思想がある限りのおいては、他国との交渉においてイーブンの取引をしようという発想は出てこない。

自分が常に正しいという思想は、その理論に破綻が生じた時、理論破綻を取り繕うための新たな理論が必要になる。中国の言い分の多くはスタート地点でそもそもずれが生じていることが多いので、取り繕う言い分は更にずれが生ずる。
言っている本人も100%自信を持って発言しているわけではないので、理論破綻を指摘されたときは、開き直るか、怒るか、暴力に訴えるか、その程度の行動しか残されない。

中華思想をベースにして、中国破綻のシナリオを支える筆者の意見は大きく分けて2つだ。

ひとつ目は、中国は社会主義国で計画経済を導入しているということ。
中国は土地などの資産を個人的に所有することが許されていない。また、中国では、動産と不動産の区別がない。動産と不動産が一緒くたに資産として分類される。そして、その資産量イコール流通通貨量となる、
中国が今後も潤沢に通貨を流通させるには、それに見合った資産が必要になる。中国が今後も成長をするためには、領土を拡張して資産を拡大させていく必要があるということを見逃してはいけない。
今後も成長するには、資産を増やし、かつ、国内の労働力を増やしつつも賃金を低く抑えないと、付加価値を増加させることはできないのだ。

ふたつ目は、下層民衆が困窮し始めているということ。
中国の人口構成は、共産党員と軍部が1億人、比較的裕福な都市生活者が4億人、それ以外の下層民衆と言われる層が8億人。また、その下に一人っ子政策の影響で戸籍を持たない人非人扱いの層もいる。
公称13億人の中国が今まで、比較的安定期に国家を運営していけたのは、下層民衆とその下の層が「そこそこ」食べていけたからだ。
しかし、その「そこそこ」が限界に来ている。都市生活者と下層民衆の生活格差は日に日に拡大している。経済の破綻がすこしずつ進むに連れて、下層民衆の不満は大きくなり、中国共産党と軍を脅かす暴動が増加する。

これが中国破綻を主張する筆者の主な主張である。
イカルに勤務して長く中国で仕事をしてきた筆者の主張は、飛躍がなく、わかりやすく説得力がある。

中国の破綻が現実味を帯びてきた時、世界がどのように救済を行うのかは不明だ。ただ、日本に対する影響は甚大になるとこだけは間違いがない。