この世でいちばん大事な「カネ」の話/西原理恵子

漫画家西原理恵子の自叙伝。

ギャンブルに溺れ、借金苦に陥り自害した義父のエピソードが悲しい。
義父は、西原が大学を受験する日に自害した。
義父は、西原の母と死ぬためのドライブに出かけ、何度も西原の母を殴った挙句に自殺した。葬式のとき母の顔は、義父の暴力で腫れていたそうだ。それでも、参列者に頭を下げる母の姿は痛々しい。

人はだれもが自分勝手だ。心の不安を解消するために何かに依存する。
依存対象が自分自身であることが一番安定する。しかし、世の中はそう単純ではない。

自分が信用出来ないから、家族や恋人や友人を頼る。一番信頼出来るはずの家族や恋人や友人が信頼出できい時に、ひとは破壊的になり、破壊的な気持ちを増長させるものに頼るようになる。

それはギャンブルであり、酒であり、薬であり、セックスであり、暴力である。隙間だらけの心を埋めるには最高のアイテムだ。何より現実と自分自身を忘れることができる。
依存対象ができると、そこから抜け出すことができないのが人間の弱さなのだ。

依存から抜け出す唯一の方法は、強い自分を見つけることしかない。それは強くなる自分でも構わないし、強くなるかもしれない自分でも構わない。とにかく自分自身を深く見つめることが大切なのだ。

どうして強くなれないのか?
それは経験に大きく依存している。成人するまでの学習内容と成功体験の量と質が成人してからの人生を大きく左右する。

西原はこう言う。

貧乏人の子は、貧乏人になる。
泥棒の子は、泥棒になる。
こういう言葉を聞いて「なんてひどいこと言うんだろう」と思う人がいるかもしれない。でも、これは現実なのよ。

ひとの未来は、過去の学習内容と成功体験で未来が決定する。ダメな人生を送ってきなら、これからもダメな人生を送ることになる。ダメな親に育てられるとダメな人間になる可能性も高くなる。

強い自分を見つけ出し、ダメな人生から脱出する道はないのか。
強い自分を見つける唯一の手がかりも、学習内容と成功体験だ。どんなにひどい過去であっても光を当てるとキラキラと輝くダイヤモンドの原石があるはずだ。

それを見つけることができるかどうかが、強い自分を見つけ、自分自身を助ける唯一の方法なのだ。