相手の話を傾聴する。相手に適切な質問を投げかける。相手の気持ちを察する発言をする。交渉を上手くいかせコツはたったこれだけ
最初に断っておかなければならないのは、本書を読んでも「一瞬」で相手の心を動かすことはできません。
「一瞬で」という表現は、出版社がタイトルを印象づけるためにつけたものと思います。表紙のスパイ風の画像や「一瞬で」というタイトルは中身を直接的に表していない気がするのですが、、、
しかし、本書で書かれていることは、一般生活で良好な人間関係を構築するためには、とても有効で簡単な手段です。
わたしはコミュニケーションを取るのが下手だ。わたしは対人恐怖症だと思う方は必読の書ですよ。
著者は米国の精神科医マーク・ゴールストン氏。ゴールストン氏は交渉術の専門家としてFBI交渉人の講師などを歴任されている交渉のプロフェッショナルです。
では、交渉のプロフェッショナルが用いる交渉のテクニックとはどのようなものなのでしょうか。
本書のポイント
本書は「交渉」を成功させるテクニックについて記載された書籍です。
本書の交渉とは、「他人を納得させ、信頼を獲得し、さらりと自分の願いを実現してしまう」ことです。
誰もが身に付けたい交渉テクニック。そのポイントは、相手の話を傾聴することです。
唯一のコツ−会話のシフトダウン
交渉を上手く進める唯一コツは「会話にのシフトダウン」と命名された以下の方式です。
- 相手の言い分を良く聞く
- 相手の話に同意する
- 相手を理解するための質問をする
- 相手の言葉を別の言葉で言い換える。要約する
とにかく相手の話を聞き、相手の言い分を理解すること。これが交渉を上手くいかせる唯一のコツなのです。
人はとかく自分の主張を優先しがちですが、人の話を聞けない人は交渉ごとを上手く進めることはできません。
理解されると人は変わる
人は理解されたと思うと、心を開き、相手を受け入れます。交渉には相手との信頼関係構築が第一作業になります。この第一作業が終われば、残りの交渉はスムーズに行くのです。
では、理解されたと思わせるには、何が必要なのでしょう。
本書では、理解するための6ステップが紹介されています。
- 相手の気持ちに合った感情表現の言葉を探す
- 相手の感情について考えたことを伝える
- 相手に考える時間を与える
- 原因について質問する
- 前向きな気持ちを引き出す
- 協力を申し出る。
例えば、次のような会話が考えられます。
まずは、相手の気持ちについて考えます(ステップ1) あなた「何か落ち込んでいるようですが?」(ステップ2) あいて「そうなんです」 あなた「それは、この前の○○○が原因ですか?」(ステップ3) あいて「そうですね・・(考える)・・・かもしれません」 あなた「どうしてそうなったのでしょうか?」(ステップ4) あいて「そうですね・・(考える)・・・かもしれません」 あなた「今晩、飲みに行って気分転換しませんか?」(ステップ5) あいて「・・・」 あなた「わたしをウサのはけ口にしてくださいよ」(ステップ6)
相手の考えを引き出す
人間の思考は3つの要素から成り立ちます。相手に適切な質問をして話をうまく引き出してあげましょう。
人間の思考は「どう感じるか」「どう考えているか」「どうしたいか」の3つから成り立っている。したがって、相手の思考の3つ要素すべてを引き出せれば、相手は大きな満足感を得られる。
逆にあなたが相手の話も聞かずに、この3つを話し続けたら相手からの信頼を得ることはできません。
信頼関係構築は簡単なようで難しい
本書に書かれている交渉を上手くいかせる方法のポイントは、上記の通りです。
「な〜んだ、相手の話を聞いてあげれば良いのね」と理解したあなた、その通りです。相手との信頼関係構築は、ほぼ話を聞くことで上手くいくのです。とても簡単です。
でも、人には自己主張というものがあります。相手の発言が間違っていたりすると、どうしてもその場で話をさえぎって、自分の意見を言いたくなるものです。
特に相手が年下だった場合は、特に意見したくて仕方なくなるものです。しかし、グッと我慢です。最後まで話を聞きましょう。じっと話を聞きましょう。話が終わっても、自分の意見を言ってはいけません。
次のひと言を忘れずに。
「なるほど、それで?」
どうですか?これって難しくないですか?
自分自身の心をコントロールできないと難しそうですね。
そう考えると学校の先生ってとても偉かったなぁと思います。良い先生は、とにかく話を聞いてくれました。
「そうか、そう思うのか!」
「偉いぞ!」
「とても悲しい気持ちだったんだなぁ、、、」
「もっと、おまえの考えを聞かせてくれ!」
大好きだった先生って、だいたい話を聞いてくれました。
こうやって「おまえのことが大好きだぞ!」ってメッセージを発信していてくれたんですね。さすがです。
わたしたちも、がんばって、明日から(苦痛でも)後輩や部下の話を徹底的に聞くこにしませんか。
目次
第1部 心を動かす2つの秘訣
- すべてのコミュニケーションは交渉だ
- 脳の仕組みを理解せよ
第2部 心を動かす9つのセオリー
- まず自分自身をコントロールせよ
- 心のフィルターをリセットせよ
- 先に理解すれば理解される
- 興味をひこうとするな。興味を持て
- 「自分には価値がある」と感じさせよ
- 極度の緊張は交渉のじゃまをする
- 自己認識のずれを正しておけ
- 弱みをかくすな。武器にせよ
- どうしても手に負えない人間がいる
第3部 心を動かす12のテクニック
- 不可能の質問
- 魔法のパラドックス
- 共感のゆさぶり
- 逆共感のゆさぶり
- 「本当にそう思う?」の質問
- 「なるほど、それで・・・」のあいづち
- 事前合意の戦略
- 人生に関わる”大きな質問”
- 目線を合わせる
- 穴埋め質問
- 「ノー」を恐れない
- パワー・サンキュー
第4部 実践編 心を動かす交渉術を磨く
- 相手にあわせた交渉方法を選ぶ
- 周囲に実力を認めさせる
- 困った相手を対処する
- 新しくネットワークを開拓する
- キレてしまった人に対処する
- 自分自身の心を動かす
- 大物と知り合いになる
- 作者:マーク・ゴールストン
- 発売日: 2012/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)