世の中には、さまざまなビジネス理論が存在します。
ビジネス理論は、それぞれのビジネス分野で特定の役割を担っています。そのビジネス理論がどの分野でどのような役割を果たすのかを理解しないまま学習すると、理解できずに悲しい結果に終ってしまいます。
企業活動のどの分野のどの機能で利用可能なのかを特定してから、ビジネス理論を学習すると、スムーズに学習が進みます。
ビジネスを機能ごとに分割する方法はさまざまありますが、中野明著の「早わかりビジネス理論」ではドラッカー理論を利用したドラッカーのフレームワークを紹介しています。
ドラッカーのフレームワークはとてもシンプルですが、ビジネス理論の効果を特定する際にとても役立ちます。また、本フレームワークで事業評価を行うことで、事業全体を俯瞰できますので、事業の矛盾や弱点を発見することに役立ちます。
マネジメントとは何か
概略図では組織全体がマネジメントであるというとらえ方になります。
一般的にマネジメントは何かを管理するという意味で使われますが、ドラッカーのマネジメントはもう少し大きい意味で使われています。
本書では、マネジメントを次のように定義しています。
マネジメントとは、社会機関としての組織をして、社会や地域・個人のニーズを満足させるための道具・機能・期間である。
つまり、組織が目的を達するための活動全般の総称をマネジメントと呼びます。
①企業の使命(Mission)とは
製品やサービスを顧客に提供することが、主たる企業の活動内容です。製品やサービスを得た顧客が満足すれば、リピーターとなり、企業の収益は増加します。つまり、企業が十分な収益を得るためには、企業は顧客を満足させていかなければなりません。
これをドラッカーは「顧客を創造する」といいました。
企業が社会の様々なニーズすべてに答えることはできません、製品やサービスを投下する分野を限定し、その分野で求められているニーズをくみ取ることが必要です。
個々の企業が社会のどのようなニーズに対応するのか特定するには、その企業の使命(ミッション)を明らかにすることなのです。
使命を明らかにすることで、その企業が社会に存在する理由がはっきりし、社会に対して適切な成果をあげるためするべきことが明確になるのです。
企業の使命(ミッション)は企業にとってのゴールを意味するのです。
②企業戦略(Strategy)とは
ミッションというゴールが決定したら、ゴールに向かうための道筋を決定する必要があります。
ゴールまでに向かう道筋は通常複数存在します。このゴールまでの道筋を決定することが企業戦略となるのです。
企業戦略は本書で次のように定義されています。
事業の目的や手段についての意思決定
企業戦略がより適切であるためには、次の3つが実行されなければなりません。
- 経営環境の分析と診断
- あるべき経営の姿の明確化
- あるべき姿への移行策の立案
まず、企業環境を分析し、企業の使命(ミッション)を実現するための会社の姿を描きます。そして、現状と企業の使命(ミッション)のギャップを埋める策を立案するのです。
③マーケティング(Marketing)とは
ゴールへの道筋が決まったら、顧客を創造する活動を行わなければなりません。この活動をマーケティングと呼びます。
ドラッカーはマーケティングを次のように定義しています。
顧客というものをよく知って理解し、製品(ないしはサービス)が「顧客」に「ぴったりと合って」、ひとりでに「うれてしまう」ようにすること
また、次のようにもいいました。
買わないことを選択できる第三者が、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを供給すること
つまり、顧客が望んで購入するようにすることをマーケティングと呼びます。
④イノベーション(Innovation)とは
市場には競争があります、マーケティングだけ行っていては、いつか他社に顧客を奪われてしまいます。競争に勝つために企業は、今までと異なる価値を市場に提供し続けなければなりません。これがイノベーションです。
イノベーションは次のように定義されます。
既存の資源(人的資源、物的資源、社会的資源など)に、新しい、より大きな富を生む能力を与える仕事
マーケティングはイノベーションとあわさることで、価値を増大し、より強固に顧客を創造するツールとなっていくのです。
まとめ
企業が車と仮定すると、ドラッカーのマネジメントフレームワークは次のように説明できます。
企業の使命は、会社を推進させるエンジンです。車を方向付けするハンドルは経営戦略で、マーケティングとイノベーションは路面に力を伝える両輪です。
これら、企業の使命、経営戦略、マーケティング、イノベーションのどれかひとつが欠けても、企業という車は正しく進まないのです。
このフレームワークはビジネス理論を学習する際にも利用可能ですが、既存企業を評価する際にも大きな力を発揮します。
フレームワーク図にあるように、企業の使命→経営戦略→マーケティング・イノベーションと個々が上から下におりていく形でないと企業はパワーを最大限に発揮できません。また、個々が独立せずに関連し連動しなければならないのです。
このドラッカーのマネジメントフレームワークは、大変によい考え方ですので、ビジネス評価の様々な場面で有効活用可能です。