ザ・チョイス/エリヤフ・ゴールドラット

ひとは物事を複雑だと信じ込んでいる。だから、複雑な説明やソリューションを求めてしまうのだ。しかし、これは現実をどう認識するかで変わってくる。現実は驚くほどシンプルなのに、人はそれを極めて複雑なものととらえてしまう。

ザ・チョイスの基本思想

  1. 人は善良である
  2. 対立はすべて取り除くことができる
  3. どんなに複雑に見える状況も、実は極めてシンプルである
  4. どんな状況でも著しく改善することができる。限界なんてない
  5. どんな人でも充実した人生を達成することができる
  6. 常にウィンウィンのソリューションがある

効果的に頭脳を使えない理由

  1. 現実が複雑だと信じていること
  2. 対立は当たり前だと思っていること
  3. 問題を他人のせいにしたがること

複雑だと思える状況でも、実は常識的な原因と結果のロジックによって、ものごとは左右されている。この事実を理解できれば、素早く根本的な問題に焦点を絞ることが可能になる。
ひとは対立の直面したときに、妥協点を見いだそうとする。妥協とはウィンルーズの関係を作り出すことであり、自身の取り分を守ろうとするため、他人には寛大になることはない。本来は対立の原因を取り除きウィンウィンの関係を構築すべきなのである。

複雑な状況を作り出している原因

複雑な状況は、多くの人が関係しているときに起こる。ひとはそれぞれ性格が違う。ひとが集まって一緒に何かを成し遂げる組織の運用が難しいのはそのためである。

最適化は妥協の産物

最適化は対立を除去するのではなく、「最高の妥協点」を見つけるだけで、何かを解決しているわけではない。

明確な思考をするには

「何々だから」という理由を耳にするとき、特にその理由に抽象的なものが含まれるときは注意が必要である。抽象的なものは、その存在さえ疑ってかからなければならない。仮説か想像程度に考えて老いた方がよい。
そして、別な結果がないかを考える。もしも見つからない場合は、考えている範囲が狭いからだ。

コンフォートゾーン

コンフォートゾーンとは、ひとが原因と結果に関して十分な知識を有している領域、あるいはある行動に対してどのような結果が予測されるか十分な知識を有している領域をいう。
ひとはコンフォートゾーン内での活動は積極的におこなうが、コンフォートゾーンから外れるととたんに消極的な態度となる。
人をコンフォートゾーンの外の追い出すシナリオは次の通りである。

  • 望ましい結果に達するために、特性の行動を起こすことを強制される
  • 強制された行動に関する知識がなく、望まれる結果を達成させることができないと確信する

アパレルブランドの事例

本書は、ビジネスにおいて発生する対立が極めてシンプルであることを示すレポートがいくつか紹介されている。
以下は、その中のひとつアパレルブランドにおける事例をまとめた。

  • 現状・年商数十億ドルの、売上高利益率約10%(10億ドル)のアパレルブランド
  • テーマは利益率を増加させること
  • 従来、テーマの実行の手法はコスト削減を中心におこなっていた
  • シーズンごとの品切れ率は約30%。人気商品はシーズン開始直後に品切れになる
  • 品切れによって売りなわれる潜在的な売上は、現在の売上高と同額と予測される
  • 製品はシーズン分一括でサプライヤーに発注する
  • シーズンが始まってから追加発注することはない
  • 製品寿命は6ヶ月。残在庫はバーゲンで一掃
問題点
  • シーズン当初に需要を予測し、一シーズン分を一括で発注
  • 売り切れ製品の追加をおこなわない(大きなチャンスロスが発生)
  • 売店は売れ残りそうな商品を目立つ場所に移動(売れない商品を目立たせている)
  • 売店には売るべき商品が品切れになり、売れない商品が店舗にのこる
業務フロー改善
  • シーズン当初は1ヶ月分の在庫でスタート
  • その後、販売量を基に追加発注をおこなう
  • 売店の発注から2日以内で納品することを約束(小売店は在庫を持つ必要がなくなる)
  • 随時発注の形態をとることで、ビッグブランドは売れ筋商品の情報が入手できる
目標純利益の変更

新業務フローの採用で、当初10億ドルで設定されていた年間目標純利益は、40億ドルまで引き上げられた。(40億ドルでも控えめな設定)