池上彰さんの話が<わかりやすい>理由

■はじめに

わかりやすく話を伝えること。とても簡単なようですが、実はとても難しいことです。
テレビでニュースを解説している池上彰さんは、難しい国際ニュースや経済ニュースを誰にでもわかるように解説しています。
池上さんがどのようなことに注意して、話を伝えているのか。
池上さんの著書「わかりやすく〈伝える〉技術」では、池上さんの伝える技術が”わかりやすく”解説されています。
以下に、本書内で紹介されている①聞いてもらう工夫、②正確に伝える工夫、③惹きつける工夫、④さらに伝える工夫を紹介します。

■①聞いてもらう工夫

話にはリードをつける

あらかじめ「いまからこういう話をしますよ」と聞き手に対して伝えることで、聞き手は話を聞く心構えができ、スムーズに話に入っていけます。
事前に、こんな話をして、ここがポイントです、聞き手に伝えることで、聞き手は話しに入りやすくなります。

所要時間を伝える

事前に、これから話す予定時間を聞き手に伝える。「何分お話します」と予定時間を告げることで、聞き手は、話に対しての注意力が大幅に向上します。

逆三角形で伝える

時間が足りなくなっても大丈夫なよう話は逆三角形で伝えます。
逆三角形とは、話の分量ではなく、ニュースバリューが大きなものから伝えるということです。
例えば、

  1. こういうことがありました。(リード)
  2. 詳しくはこういうことでした。(本記)
  3. それはこういう理由でした。(理由、原因)
  4. 警察などが調べています。(見通し)
  5. ちなみにこんなこともありました。(エピソード)

上記のように、バリューとしていちばん大切な、出来事を最初に伝えることで、聞き手の興味をあとの話につないでいけます。

話す対象を意識する

どんなレベルの人に向かって説明するのかを、あらかじめ想定しておきます。対象の聞き手を意識しない話では意味をなしません。

■②正確に伝える工夫

短い文にすれば文章がうまくなる

論理的に筋が通っている文は短くてわかりやすくなります。文の前後を論理的に組み立てさえすれば、文章を短く分けても破綻をきたしません。

現場の地図を示す

聞き手が場所をイメージできるよう、現場の地図を用意します。
その際、大切なのは聞き手が、自分の住む場所との位置関係を理解できるようにすることです。例えば、秋葉原付近で起きた事故を説明するのであれば、関東地方の地図→東京駅と上野駅が入った地図→現場の地図という順に示します。

ノイズをカットする

表などを作成する場合、情報の伝達に不必要な情報(ノイズ)は取り除いておきましょう。

■③話に引きつける工夫

3の魔術を活用

人は一度に多くのことを記憶することができません。ポイントを絞って話を組み立てることが大切です。

  • 話すポイントを3つに絞る
  • 30分話す − 話す時間を30分に決め10分ずつ3つのポイントを話す
  • 現在・過去・未来という3つの観点で話す
  • 現状・反省・改善という3つの観点で話す
聞き手を見る

一瞬だけでもいいので、聞き手ひとりひとりと視線を合わせるようにします。

抽象的な話から具体的な話へ

わかりやすい説明は具体的でなければならりません。。
抽象的な話に終始すると、聞き手にフラストレーションを与えてしまいます。話の最後には具体例や具体的措置、具体案を話すようにしましょう。

■④さらに伝える工夫

「そして」はいらない

わかりやすく伝える上で大事なことは「接続詞」を極力使わないことです。
「だから」や「そして」を多用すると、とりあえずは文章を書き綴ることが可能になるが、わかりやすい文章からはほど遠くなります。

「ところで」を多用しない

「とろこで」は話の内容が変わる際の接続詞です。話をしている最中に何度も利用すると、話が散漫になっている印象を与えます。「ところで」本当に必要な場面にのみ利用しましょう。

「いずれにしましても」は話をチャラにする

話を終わりにするときに利用する「いずれにしましても」は、強制的に話を終了する際に利用してしまうことがあります。しかし、それまでの話をチャラにするという意味なので、聞き手に不信感を与えます。

「大変なんです」という隠れマジックワード

マジックワードとは、相手に自分の話を面白く、興味深く聞いてもらいたいときに効果のある言葉のことです。話の冒頭に「大変なんです」と言ってみる。これだけで、聞き手の注目度は急上昇します。

■おわりに

池上さんの話の特徴は、わかりやすさにあります。池上さんの話のわかりやすさは、上記の工夫の上に成り立っています。
決して難しいテクニックではありませんので、簡単に真似ることが可能です。