小さなチーム、大きな仕事/ジェイソン・フリード他

筆者の所属する企業37signalsは、少数精鋭でASP事業を行っているソフトウェアサービス企業である。
Rubyの標準フレームワークであるRuby On Railsは、彼らの製品であるBasecampを構築するために作成されたソフトウェアだ。
37Signalsのようなベンチャー企業がどのように大手企業に立ち向かい、激しい競争のなか成果を上げることができたのか?
本書では、37signalsがどのような哲学で製品開発やサービスを提供しているかが詳細に記載されている。
その中から、37signalsがもつ特徴的なアイディアをピックアップした。

※作者のジェイソン・フリードがTEDで、管理職と会議の有害性について語っている。興味のある方は、こちらもご覧いただきたい。
ジェイソン・フリード:なぜ職場で仕事ができないのか | Video on TED.com

働き方

    • 仕事依存症は正しい判断ができない − 仕事人間は、価値観が狂ってしまい、正しい判断ができなくなる。
    • 仕事依存症は鋭い判断ができない − 仕事ばかりしていると、心も体も疲れ切ってしまう。疲れていたら鋭い判断は下せない。
    • 適切な余暇あってこその仕事 − 適切な休養と適切な余暇が、ビジネスの発展を促す肥料になることを忘れてはいけない。

会社経営

    • 核(コア)から始める − 起業時は、さまざまなことに時間をとられる。本当にやりたいこと、やるべきことに絞ってスタートする。
    • 「変わらないもの」に目を向ける − ビジネスを始めたら、その核(コア)は変わってはならない。顧客が今日ほしいと思い、10年後もほしいと思うものを続ける。
    • 会社の規模は関係ない − あなたの会社の規模は、あなたとノートパソコンだけかもしれない。最初は、会社の規模を考えずに、事業をゆっくり成長させながら、最適な会社規模を判断すればよい。
    • 「失敗から学ぶこと」は過大評価されている − 大切なことは「次に何をするべきか」であって「次に何をしてはいけない」ではない。
    • 外部資金は最終手段 − 外部の資金が入ると、会社のコントロールを失う。売却ありきの資金調達では良質のビジネスは構築できない。
    • 過ちへの対応は自分で引き受ける − 間違いを犯したなら、直ちにそれを認め、自らが先頭に立ち真摯に対処しなければならない。

社内運営

    • 小さな勝利を手に入れる − 大きなゴールを目指すより、小さな成功を積み重ねる。大きなゴールは精神を摩耗させる。
    • マーケティングは部署ではない − マーケティングを特定部署の仕事と考えない。マーケティングは社員全員の仕事である。
    • 会議は有害 − 1時間の会議で費やす時間は1時間ではなく、参加した人数をかけた時間である。10名なら10時間の消費だ。はたして、その会議にそれだけの価値があるのか。
    • 対応の速度はすべてを変える − 顧客サービスでもっとも大事なことは、すぐに返事をすることだ。素早く反応することで悪い状況をも良い状況に転じることができる。

製品開発

    • あなたが必要なものを作る − ベンチャーは大企業のようなマーケティングに費用をかけられない。いちばん簡単なマーケティングは自分が欲しいものをつくること。
    • シンプルにする − 一番大切なものだけが残るまで機能を切り落とす。とことん、それを繰り返していくのだ。 落とした機能を後で追加することはとても簡単だ。
    • 一線を画す − 多くの製品は、機能が多すぎ、ボタンが多すぎ、あいまいで、複雑すぎる。すべての人にフィットしなくてもいい、シンプルにするべきだ。
    • 商品をありふれたものにしない − 商品が真似されないようにするには、自分自身のキャラクターを商品やサービスに組み込みべきだ。あなたのユニークさを注入すれば、それを誰も真似ることができない。
    • ひらめきには賞味期限がある − ひらめきは、永遠に持続できるものではない。何かしたいのであれば、今すぐに実行にうつすべきだ。

マーケティング

    • 競争相手以下のことしかやらない − 競争相手を打ち負かすには、なにごとも相手よりも「少なく」する。簡単な問題を解決して、競争相手には、難しくて扱いにくい問題を残す。ひとつ上をいく代わりに、ひとつ下回る作戦を実行してみる。やりすぎる代わりに、やっていることが相手以下になるようにしてみよう。
    • 顧客の声を書き留めてはならない − すべての顧客の声に耳を傾ける必要はない。本当に大事なことは、自ずからやらやる必要が出てくる。
    • けんかを売る − 競争相手が最低だと思ったら、そう言ってみよう。そうすれば、あなたに同意する人がそばに集まってくるのが分かるだろう。アンチでいることは、あなた自身を差別化し、人を惹きつけるのに非常によい方法なのである。
    • レシピを公開する − 料理人は、レシピを料理本に記載し、自身の技術を料理番組などで披露している。これは、ビジネスの世界では普通タブーとされている。ビジネスの基をなすアイディアは、いつも秘密主義だ。しかし、情報を提供するもののみに情報が集まってくることを忘れてはならない。
    • お試しを提供する − ドラッグの売人は、抜け目のないビジネスマンだ。彼らは、自分の商品がすばらしいことを知っているので、先に少量を無料で提供する。後で、初期投資以上のものが(現金で)もどってくることを事前にわかっているのだ。