文書を論理的にまとめる方法

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

  • 作者:山崎 康司
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

■はじめに

私たちが、普段書いているビジネス文書は、読み手を説得するということを目的にしています。
文書の読み手は、同僚、上司、ビジネスパートナー、顧客などさまざまです。
ビジネス文書は、読み手が誰であれ、書き手が「自身の立場を有利」にするため、説得を試みるいうことは共通です。
まずは、読み手の立場を理解し、自身が考えている事象に賛同してもらうのです。

そのため、文書は読み手が納得できる論法で、論理的でわかりやすい論理で書かれていなければなりません。

論理的にわかりやすく書くということはどういうことなのでしょうか。
入門 考える技術・書く技術」では、論理的にわかりやすくまとめる手法として、OPQ分析とピラミッド構成を紹介しています。

■論理的にまとめるOPQ分析

これから書くべき文書のストーリーを考えるときにOPQ分析を利用します。

O) Objective(望ましい状況)

これは、「読み手が考えている達成すべき目標や改善後の姿」です。
例えば、

  1. 設定した売り上げ目標を達成する
  2. 健全な財務体質を維持する
  3. 在庫を削減する

本書内の例より引用

など、具体的な目標のことです。

P) Problem(問題、すなわち現状とObjectiveとのギャップ)

望ましい状況「O」とのギャップ、すなわち解決するべき問題のことです。
例えば、

  1. 上昇軌道にあった売り上げにブレーキがかかったために、目標達成が危ぶまれる
  2. 不良資産100億円の存在が明らかになった
  3. 在庫が急増した

本書内の例より引用

など、実際に抱えている問題のことです。

Q) Question(読み手の疑問)

問題「P」に直面している読み手が解決に向けて自然に抱くであろう疑問のことです。
例えば、

  1. (Pから発生される読み手の疑問はいくつか考えられます。読み手の状況をしっかりと調査し、最も適切な疑問を探します。)「売上目標を達成するにはどうすればよいか?」、「売上目標を下方修正すべきか?」
  2. どうやってこの不良資産を処理すべきだろうか?
  3. 在庫を削減するにはどうすればよいか?

本書内の例より引用

A) Anser(答え/文書の主メッセージ)

読み手の疑問「Q」に対する答えです。疑問「Q」の質問に答える形式になっていなければなりません。

  1. 「目標達成には、・・・・・すべきである」、「売上目標は、今は修正すべきでない」
  2. この不良資産は・・・・・の方法で処理すべきである。
  3. 在庫削減のためには・・・・・するのがベストです。

本書内の例より引用

OPQ分析のコツ

論理が自分勝手になっていないか、わかりやすい論法になっているか確認するため、以下の観点で作成したOPQ分析を見直します。

  • 読み手の視点で表現する
  • 比較のレール(トピック)を外さない
  • 文書の主メッセージに直接答える

文章を書き出す前に、まずはOPQ分析で、ストーリーを組み立てます。文書の主メッセージには、なぜそのメッセージなのかを理解してもらうための論拠も必要になります。
また、基本的に文書内に書かれる主題(QとA)は、ひとつでなければなりません。

■論理的に書くピラミッド構成

本書では、複数の特定事象(事実)から要約(結論)を導き出す帰納法と、絶対的に正しいことや、一般的に正しいと判断されること(前提)から結論を導きだす演繹法が紹介されています。
ビジネスの世界では、圧倒的に帰納法が利用されています。ビジネスでは絶対的に正しい前提が少ないため、演繹法を使う機会はあまり多くはないようです。

前提条件を集める

推測される結論を述べるにあたり、結論の論拠となる事実(前提条件)を考えます。
例えば、「馬には1つの心臓がある」という結論を支える前提条件は

  • この馬には1つ心臓がある
  • その馬には1つ心臓がある
  • あの馬には1つ心臓がある

ゆえに「馬には1つの心臓がある」との結論が導き出せます。

前提条件のチェック法

いくつか前提条件が集まったら、つなぎことばを入れて確認します。
「馬には1つの心臓がある、なぜならば、この馬には1つ心臓がある」
「中小企業は景気が悪い、具体的には、製造業の80%は売上が前年度を割っている」
この「なぜならば」、「具体的には」がつなぎ言葉になります。

前提条件のつなぎことばはすべて同じ

複数ある前提条件と結論をつなげるつなぎ言葉は、毎回同じでなければいけません。
例えば、
「中小企業は景気が悪い、具体的には、製造業の80%は売上が前年度を割っている」
「中小企業は景気が悪い、例えば、A社は業績の下方修正を検討している」
このような前提条件の場合は、ロジックが正しくない可能性があるので、正確に同じつなぎ言葉でそろえます。

結論は先に述べる

「弊社の○○部門は毎年100%の売上上昇が見込まれます。理由は3つあります。第1の理由は・・・です。第2の理由は・・・です。第3の理由は・・・です。」
このように結論を先に述べ、続いて理由を述べます。
最後に結論を述べると、理解してもらうまでに時間がかかる上、前提条件に問題があると、結論が全く理解されません。
結論を先に述べることで、読み手は、最初に結論を理解できるので、納得しながら読み進むことができます。
また、途中で納得できれば、いつでも読むことをやめることができるのです。
時間がない意思決定者にとって、構成を結論を頂点にしたピラミッド型にすることで、安心して読み進めるのです。

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

入門 考える技術・書く技術――日本人のロジカルシンキング実践法

  • 作者:山崎 康司
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)