ソーシャルメディアをひもとく3つのキーワード/新ソーシャルメディア完全読本

インターネットの広告は、今まで通りの成長を見込むのは難しくなってきているようだ。
次のような結果を見た広告主は、今まで以上に広告費をつぎ込むことはしないだろう。

2008年2月、米国スターコム社他2社から注目すべき共同調査が発表されました。それによると、バナー広告の全クリックの50%は利用者全体の6%が行っており、さらに68%のユーザーは調査期間内で一度もクリックしなかったのです。

つい3年ほど前まで「SEO/SEM対策と広告対策」は、企業ウェブサイト構築時の重要な作業項目だった。
インターネット上で上位検索され、広告を出すことは、ユーザーの認知度を上げ購買機会を向上させるものであったからだ。
ところが、上記の調査結果は、ほとんどのユーザーがバナー広告に興味を示していないということである。
上記の調査結果は、バナー広告のみに言及しているが、他の広告についても多少の差はあれ、同じような傾向であることは間違いがないだろう。

ひょっとすると、検索エンジンで上位検索されるということも、企業の販売活動にはあまり意味を持たなくなっているのかもしれない。
価格比較サイト、商品レビューサイト、商品比較サイト、利用ユーザーのブログ、質問サイトなど、商品を購入検討する際に参考にするサイトは圧倒的に増えた。
今さら、上位検索されたところで、販売機会を広げることにはなりそうもない。

SEO/SEM対策・広告対策に替わって、企業におけるソーシャルメディアの有効活用が盛んに議論されている。
ソーシャルメディアとは何か、ソーシャルメディアが何を変えていくのか。
新ソーシャルメディア完全読本」はソーシャルメディアの国内外の事例とトレンドをわかりやすく説明した書籍だ。
本書より、ソーシャルメディアを理解するための3つのキーワードを抽出してみた。

ソーシャルグラフ

ソーシャルグラフというのは、人間がどのようにして関係しているかを総合的にまとめた「人間関係のデータ」です。

現在、ソーシャルグラフ保有している大手のネットワークサービスは

これら、人間関係の情報を持ったサービスは、ユーザー同士の影響関係から、特定ユーザーの嗜好や物理欲求などを知ることができる。

特に、実名主体でリアルな人間関係の影響情報を持っているFacebookは、そのデータを利用することで、ユーザーの意思決定を誘導することが可能だ。
何かの購入検討の情報が書き込まれたなら、ユーザーの嗜好や影響関係を調査し、好みの商品やサービスの情報を提供することで、購入を誘導することが可能になる。

同じソーシャルネットワークサービスのモバゲーやGreeは、ゲームを中心としたコミュニケーションなので、消費者の実購買にたどり着くのは困難だ。
また、mixiもハンドルネーム中心の文化なので、リアルな人間関係までは正確には把握できていない。
Facebookが持つ、実名での6億人ものユーザー情報が作り出すソーシャルグラフが、現在の最強の関係情報であることは間違いない。

商品やサービスの提供者から発信される一方的な広告は、消費者の心を動かすほどの影響力を持たなくなった。
人間の影響関係を把握し、それらの情報を利用できるネットワークサービスは、今後の社会に大きな影響を与えていくのだ。

マーケティング3.0

利用者は情報交換を重ね、しだいに賢くなってきます。グループ間で綿密に連絡し合う手段もでき、作り手のウソや過剰宣伝にダマされないようになっていきます。

今や、マスメディアの作りだす情報は、消費者に正直には受け入れられることはない。それは、今までの企業やマスディアが提供してきた情報にウソが多すぎたからだ。

記憶に新しい出来事としては、フジテレビの「あるある大辞典」の納豆ダイエットの騒動がある。
放送後、爆発的に納豆が売れて店頭から納豆が消えた。しかし、その後、番組の内容が全くのデマであることが判明するのだ。
様々なプレッシャーの中で、番組を作る制作者には同情するが、このようなウソを許容してきたマスメディアは批判されるべきである。

このような、あるまじき出来事や氾濫する情報の中で、本当の信頼できる情報を友人や知人から得るようになるのは当然のことなのである。
マーケティングの父フィリップ・コトラーは近年の著書「マーケティング3.0」で

企業は生活者に「どのように(製品開発や販売などに)協力してもらうか?」

と主張している。
今までは、企業やマスメディアが一方的に発信していた情報は、消費者に見向きもされなくなった。
これからは、企業やマスメディアが積極的に消費者の意見を聞き入れなければならない時代なのだ。

ソーシャルコマース(シェア)

ソーシャルコマースとは、オンライン・コミュニティにおけるクチコミの力をフルに活用した新しいスタイルのEコマースの総称です。

消費者は積極的に情報を共有し、自身の意志決定に役立てようとする。この消費行動は、ソーシャルネットワークの流行にともなうブームなどとは呼べなくなった。
今、実際に、社会に起こっている事実だ。
従来の消費者行動は、「AIDMA」と呼ばれる段階を得て購入に至っていた。

    1. Attention(注意)
    2. Interest(関心)
    3. Desire(欲求)
    4. Memory(記憶)
    5. Action(行動)

マスメディアから得た情報が、そのまま店頭での購買行動に結びつく行動だった。
インターネットの普及で、情報の選択権が消費者側に移転して、「AIDMA」は「AISAS」という行動に変化する。

    1. Attention(注意)
    2. Interest(関心)
    3. Search(検索)
    4. Action(行動、購入)
    5. Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

インターネットという百科事典と検索というツールを得た消費者は自身の意志で商品の善し悪しを判断し始めた。そして、実際に購買した情報をブログなどに投稿して、状況を共有し始めたのである。

ソーシャルネットワーク以前のAISASはGoolgeやYahoo!などの検索エンジンが主役だった。
消費者は検索エンジンにキーワードを入力して、検索結果から得られる情報を頼りに意思決定を行っていた。

ソーシャルネットワークの普及に伴い、検索という行為は、インフルエンサーと呼ばれる影響度の高いユーザーからの情報を参考にしたり、ソーシャルネットワーク内で同様の購買経験を持つユーザーから意見を聞くように変化している。
Search(検索)という行為は、Ask(質問する)やInquire(尋ねる)という行動になり、より信頼できる情報を求め始めたのだ。

まとめ

今やマーケットは、ソーシャルメディアを中心にして動いてると言っても過言ではなくなった。
ソーシャルメディアの特性を理解して、自身の業務に生かしていく必要がある時代なのだ。