買い物は自分に許しを請う行為なのだ/「買いたい!」のスイッチを押す方法

日本の不況が言われて長くの時間が経過しているが、消費者は決してモノを買わなくなったわけではない。
消費をつかさどる人の脳は、不況を知らない。消費者は必要と思う商品は必ず購入する。必要がないから購入しないのである。

消費者の脳を「買わない」から「買う」に変化させるには、消費者に与える「情報」がカギとなる。

買うまでには2つのハードル

消費者が「買う」という行為を行うには2つのハードルが存在する。

一つ目のハードルは「買いたいか、買いたくないか」というハードルである。このハードルは、消費者がその商品に対する心理状態である。これは、その商品が必要か、欲しいかという心理状態で、この思いが強ければ強いほど、最初のハードルは低くなる。

二つ目のハードルは「買えるか、買えないか」というハードルである。このハードルは、これは消費者の経済状態から、その商品を買うことが現実的かどうかというものである。
当然のごとく、景気が悪ければ、このハードルは高くなる。

消費者に対して「購入の決意」を行わせるには、この2つのハードルをいかに飛び越えてもらうかが大切である。
また、売り手は消費者のこのハードルを理解して、様々な工夫をして、消費者の購買ハードルを低くする必要がある。

感性情報×購買行動モデル

消費者の購入のプロセスは「感性情報×購買行動モデル」で表すことができる。

感性情報とは、消費者の「買いたい」という気持ちを発動させるためのトリガーを引くために仕掛けである。
本書内では、その一例として210円の模型飛行機を大量に売ったお店の例が紹介されている。
その模型飛行機は、さほど売れる商品ではなかったのだが、お正月が近づいたある日、次のようなPOPを店内に掲示した。

お正月に、飛ばさなくて、いつ飛ばす?
大人の権威を示す手作り飛行機

今までさほど売れなかった模型飛行機が飛ぶように売れたそうである。
これは、中年男子の少年性をうまく突いたコピーである。大人になっても男は飛行機を飛ばしたいものである。そもそもはきっかけがないから飛ばさないだけで、自分の中で「いい訳」ができれば「購入ボタン」を押す。
このコピーには、大人が模型飛行機を買うための2つの「いい訳」が織り込まれている。
一つ目は「正月」という時間。お正月は特別であり、凧揚げと同じ感覚の模型飛行機を遊んでも、周囲文句は少ないはずである。
もう一つのいい訳は「大人の権威」。当然、購入者には子供がいるはずである。いつもは、一緒の時間を過ごせない子供と一緒に遊ぶといういい訳。
この2つの「いい訳」が購入ボタンを押したと推測できる。

感性情報とは、この例のように消費者に「この商品は買ってもいいんだよ」と訴えかけることをいう。

購買行動とは、諸費者の「感性情報」が満たされて、実際に商品をレジまで運ぶ際の行動プロセスを指す。
このプロセスを事細かに分解し、消費者がレジでお金を支払うまでの行動内で、途中購入をためらうようなシーンを作ってはいけない。
このようなシーンが存在する場合は、極力その行動を行わせないよう配慮する必要がある。

「感性情報×購買行動モデル」は、この2つの精度を高めるととで購買の確度を向上させていく。

買い物はイケナイ行為なのだ

「買う」という行為は、自分の脳に対して許しを請う行為である。
消費者の脳は基本的にすべて買い物に対して「NG」のサインを出す。「NG」を「OK」に変化させるには、売り手が買い手の脳に対して、「これは買って良い商品ですよ」と許可可能な情報をどれだけ提供できるかによるのである。
消費者の脳は、買い物という「イケナイ」行為に対して「それは必要だ!」と脳が許可する情報が必要なのだ。