切れ味の良いビジネス書評/ビジネス書大バカ辞典

ビジネス書大バカ事典

ビジネス書大バカ事典

  • 作者:勢古 浩爾
  • 発売日: 2010/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
タイトルにひかれて購入してしまいました。
書籍帯には勝間和代さんの「断る力」のカバーと同様のイラストが書かれ、その横には「そんなビジネス書にいったいいくら遣っているの?」とコピーが、、、
カバーにはタイトルのほかに「第一版」と。
これは、売れたビジネス書にありがちな、大して修正もしていないのに「新版」や「改訂版」として出版される本を意識したものでしょうか。
カバーといい、帯といい、なかなか、挑戦的な書籍であります。

人気ビジネス書著者を一刀両断

中身の方もカバーと同様に過激にビジネス書を一刀両断しています。

著者は、ビジネス書は「まともなビジネス書」と「いかがわしいビジネス書もどき」の2種類あると主張しています。
「ビジネス書もどき」とは「だれでも成功する」「だれでも金持ちになれる」「だれでも幸福になれる」と謳っているインチキ本のことです。
インチキ本は、大抵「法則」「ルール」「成功」「習慣」「引き寄せ」などの聞こえの良い言葉がタイトルやサブタイトルに利用されているとのことです。
たしかに、読み終わった後に「???」となる本は、この手のタイトルを使用していることが多いです。

このインチキ本を、数多く世の中に送り出している横綱作家は「ナポレオン・ヒルの追随者−本田健」「テキトーなただのインチキ男−石井裕之」「へんちくりんな『脳』ばかり作っている『ヘンテコ大王』−苫米地英人」の3氏です。

私自身は、この3氏の書籍は読んだことはないのですが、石井裕之氏の書籍には一家言あって「あるニセ占い師の告白」は著者が「ジョン・W・カルヴァー」なる外国人名と石井裕之氏の2名となっています。
へえ、「石井さんも翻訳するんだぁ」と思って中をのぞくと「ジョン・W・カルヴァーは私の別名で、外国人名にすると売れるかなと思ってそうしたと」との記述がありました。
正直これはあきれました。これもコールドリーディングですとの記載もありましたが、これは騙しに近い行為ですよね。
コールドリーディングの実例としてそのような方法をとったのかもしれませんが、あまりほめられる手法とは思えません。

横綱に続く「導師」として「斎藤一人」「小林正観」。大関クラスとして「神田正典」「本田直之」「勝間和代」が紹介されています。
斎藤一人」「小林正観」も横綱3氏と同様に呼んだことはないのですが、「神田正典」「本田直之」「勝間和代」は何冊か読ませてもらっています。
大関3氏の著作は、その質にムラが顕著で、良い著作もあれば「ちょっとどうなんだろう」と思う著作もあるので「編集者の執筆依頼にも『断る力』が必要」とバッサリと切り捨てられています。
本田氏の著作はあまり知らないのですが、神田氏と勝間氏は、本を出すごとに内容のクオリティが低くなっていることを感じているのは私だけでないようです。

ビジネス書もどきに騙されないために

私自身は、基本的に「自己啓発」のジャンルをよく読みます。なんとなく読みやすいのが理由ですね。あとは、すぐに実践できることが多いからです。
この手の自己啓発本は、デール・カーネギーの「人を動かす」とナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」をベースに筆者独自のエッセンスを加えて書かれているものが多いです。
この2冊を押さえておけば、自己啓発本は、これ以上読む必要がないと思うのですが、何か新しい情報があるのではと期待して読んでしまいまうのが私の弱点であります。

そういうところは、著者の言う「ビジネス書もどき」に騙されてしまうタイプの一人です。そんな、私のような騙されやすい人が、書店で騙されない「7つの習慣」を本書では紹介しています。

    • タイトルに騙されない
    • 能書きに騙されない
    • 著者の経歴に騙されない
    • 何十万部突破、に騙されない
    • 活字(本)に騙されない
    • ブックレビューに騙されない
    • 自分の価値観を持つ

著者は本書を執筆するにあたり、多くのビジネス書を読み込んだようです。本書の総ページ数は330ページでかなりの大作です。本文内で書ききれない書評は、付録として小さな字で記載されていますので、かなりの数の書籍が紹介されています。

ただ単に批判するだけではなく、読み込んだ上で批評している点は非常に好感が持てます。また、本書内ですべての書籍を批判しているわけではありません。
企業の経営者の書いた書籍については学ぶところが多いと書いています。特にヤマト運輸元社長の小倉昌夫氏の「経営学」に対する評価は同感です。

書籍に対して愛のある「的を射た」ビジネス書の書評であります。